警備には4種類の警備があって、
それぞれの仕事をするには、一つずつ研修を受けなければその警備をできない。
僕は雑踏警備(交通誘導)の研修しかしていなかった為、他の警備はできなかった。
それで新しく施設警備の仕事が入り、18時間の研修を受ける事になった。
実はその研修が問題なのである。
9時間の研修を2日かけて行うのだが、
想像して下さい。
目の前には森本レオ。
1対1での個人レッスン。
タウンページくらいの厚さの教本2冊。
それを目の前で森本レオみたいな人が一人で読み続ける。
質問もされない。
永遠とレオが読むのを聞くのみ。
こんな睡眠薬がどこにありますか?
言っておきますが、中学、高校時代の僕と
今の僕は違います。
もう僕は勉強好きな21歳です。
頭が良くなりたいと本気で思う21歳です。
高校の時みたいに、
一限目から四限目まで放課も起きずに寝てるような僕じゃあございません。
今の世の中バカは通用しないんです。
おバカブームもあの三人が人気なだけで、
ブームじゃございません。
結局は頭のいい島田紳助がいなければ意味がない事なのです。
警備の研修は勉強になるから、
本当にちゃんと授業を受けたいと思ってます。
でも、
森本レオは反則ですよ。
世界の車窓からを永遠と9時間見てるようなもんですから。
僕は始まって10分足らずで寝てしまいました。
起きては寝て、
起きては寝ての繰り返し。
うたた寝ってやつです。
寝ないと決めても寝てしまう環境なので、
もしもの事を考えてレオにバレないように帽子のツバで目を隠してました。
レオは僕を全く見ず、淡々とタウンページを読み続ける。
しばらくするとレオが、
「眠いかな?睡眠時間をあげようか?」
自分自身が情けなくて仕方がなかった。
「すいません!!もう絶対寝ませんから!本当にすいません!!」
「はい。ではそのまま続けま?す。」
良い人です。
僕を見てないフリをしておもいっきり見ていました。
そして感情をださずに、僕の気持ちを優先させて睡眠時間まで与えてくれたのです。
だから僕はもう絶対寝ないんだと心に誓った。
それでも寝そうになってしまうので、足をつねって寝ないようにした。
でもこの睡眠薬は強すぎた。
今度は5分で寝てしまった。
しかも深い眠りに…
僕の体に凄い勢いで教科書が飛んできた。
寝起きの僕は状況が全く分からなかった。
とりあえずレオに教科書を渡そうとしたらレオが、
「お前は何しに来たんだー!!さっきからずっと寝やがって!!
どんな人生送ってきやがったんだー!?」
完全に試合前のプロレスラーのテンションだった。
悪いのは俺。
それは分かっていたのだが、
レオの声と顔が変わりすぎててそこに目がいき、言ってる内容があまり受けとめられなかった。
その為僕は意外に冷静だった。
「すいません。もう寝ません。」
「今日はもう終わりだ!!帰れ!!お前なんかに金を払いたくない!!
お前には夢があるんだろ!!こんな所で寝てて叶えられるとでも思ってるのかー!!」
目が覚めてくると同時にだんだんムカついてきた。
「お前の教え方は明石家さんまだって寝るわ!!
俺に注意する前に、自分の教え方を誰かに注意されろー!!」
と高校時代だったら言っていた。
でも完全に俺が悪い。
「本当にすいません。もう寝ないのでもう一度チャンスを下さい。お願いします。」
今どき「チャンスを下さい」とか言わねーし、
起きてる事がチャンスって俺はどんだけ偉そうなんだー!とか思いながらダメもとで頭を下げた。
するとプロレスラーは笑顔で、
「そうかいそうかい。もう一度チャンスを上げよう。」
と、チャンスを与えてくれた。
チャンス。
それは起き続ける事。
レオからしたら俺に与えたチャンスなんてできて当然の事。
しかし俺にとってこのチャンスはとても過酷な事。
このチャンスを逃したら目の前にプロレスラーが現れ、
仕事を辞めさせられる事もあるかもしれない。
死んでも寝られない。
するとレオが、
「目を覚ます為にビデオを見ましょう。」
と言った。
もちろん警備のビデオです。
もしこのビデオが「世界の車窓から」だったら俺は死んでいた。
しかし警備のビデオもなかなかの睡眠薬。
役者は演技ひどいし、
役者は眉毛太いし、
あきらかに作りが古い。
なんでも貸します近藤産興のCMより作りが古い。
こりゃまた寝ちまうぞ…。
足をつねっても寝てしまうので顔をつねる。
顔をつねるとレオに眠いのがバレる為、帽子を外し顔を隠してつねる。
バレてないか確認する為レオを見る。
すると、