●『バイト探しの旅4』高柳将太
「いらっしゃいませー!!」
俺はバイトを応募しに入ったが、
向こうはもちろん俺を客として出迎える。
何度も行ったコンビニだから向こうは俺の顔も知っているようだった。
「あの?櫨さんって知ってます?」
「知ってますよ!隣に住んでる人でしょ?もう20年以上の付き合いになるからねー。」
「あっそうなんですか!実は僕、おじさんにサッカー教えてもらってたんですよ!」
「知ってるよ!小さい頃よく10円ガム買いに来てたじゃん!!」
「知ってたんですか!?それは嬉しいです!!
実はさっきまで櫨家に遊びに行ってて、
新聞配達の話を聞いて僕もやりたいなーって話をしてたんですよ!」
「あっそうなんだー!!僕も朝新聞配達やってるよ!!」
「はい!それをさっきデブオバ…いや、櫨のお母さんに聞きまして、
詳しく店長さんに聞きたいなと思って来たんですよ!」
「あっそうなんだー!うちの新聞配達は人が少ないからすぐできるし、
良い人ばっかだからやってみたら?明日聞いてみるよ!」
「まじっすか!?いいんですか!?」
「大歓迎ですよ(^-^)」
「ありがとうございます!!あっあとさっきデブ、いやおばさんに聞いたんですけど、
店長さんは新聞配達の後にそのままコンビニやってるらしいですねー。」
「うん。そうだよ。」
「あのー僕も朝やっちゃったりしてもいいですか?」
とうとう確信にせまった!
ちょっと回りくどい進め方だったが自然な流れだ。
絶対いける!!
すると店長が、
「ほんと!?是非ともやってください!凄い助かるよ!!」
作戦は見事に成功した。
後はもう簡単。
楽しくしゃべりながら聞きたい事を聞いてくだけだ。
「表に時給1000円って書いてあったんですが、
研修期間中とかって時給が下がったりするんですか?」
「いいよ!高柳君は櫨さんの知り合いだし、1000円スタートでいいよ!」
「まじっすか!?ありがとうございます!!
できるだけ早く働きたいんですが、明日からでも大丈夫ですか?」
「いいよ!明日からおいで(^-^)」
「まじっすか!?ありがとうございます!!履歴書とかっているんですか?」
「いいよ!櫨さんの知り合いだし分かってるからそのままおいで(^-^)」
「まじっすか!?ありがとうございます!!
あと贅沢かとは思うんですが、毎日働けたりできるんですか?」
「いいよ!大歓迎(^-^)」
完璧に話は進んでいった。
もう思い通りにしか話は進まなかった。
「あと1つ聞きたいんですが、短期なんですけど大丈夫ですか?」
一番ネックだった質問をぶつけた。
「全然大丈夫だよ(^-^)」
「まじっすか!?ありがとうございます!!
実はそこが一番引っかかってたんですよ。良かったー!」
「何言ってるの!!一番人が足りない時間帯に毎日働いてくれるなんて、
店側からしたらそんなありがたい事ないよ!」
「いやーホントにありがとうございます!まじで助かりました!!
頑張ります!よろしくお願いします!!」
「こちらこそよろしく(^-^)あと、一応どれくらい続けれるかだけ聞いておきたいんだけど。」
「はい!1ヶ月くらいです!!」
「1ヶ月?」
「はい(^-^)」
「1ヶ月は無理だね。」
「はい?」
「最低でも3ヶ月はやってもらわないと。」
「まじすか?」
「もしかして1ヶ月って新聞配達も?」
「はい。そのつもりなんですが…」
「新聞配達も無理だよ。」
「はい?」
「新聞配達なんか最低半年は続けてもらわないと無理だよ。」
「まじっすか?」
「うん。力になれなくてごめんね。」
「いや!!こちらこそすいません。話す順番間違えましたね。」
「ごめんね。」
「謝らないで下さい。悪いのは僕です。」
「いいバイト見つかるといいね。」
「はい。」
この前よりヘコんだ。
今日1日で天国と地獄を行ったり来たりした気分だった。
店長も気まずい感じがでてるし、俺もヘコんでる。
コンビニを出るタイミングがわからなかった。
ここで空気を変える為にふざけても、コンビニに対しての意識が低かったと思われるし、
どうしたらいいかわからない状態で店の中で突っ立っていた。
すると、俺の頭にヤンマーに言われた言葉がよぎる。
「ヘコんでる暇なんかないでしょ!!」
そうだ!!
次を探すんだ!!!
負けるな!俺!
「店長さん。タウンワーク持ってっていいですか?」
「いいよ!頑張ってね!」
「はい!!頑張ります!」
こうして俺のコンビニと新聞屋の夢は終わった。
家に帰りタウンワークを見ていた。
衝撃事実が発覚する。
短期は3ヶ月?5ヶ月の事。
そして、1ヶ月は……
「激短!」
そりゃ落ちるわ。
みなさん言葉の使い方には気をつけましょう。
でも思う。
もしこう言ってたらどうなったか。
「あの?ここのコンビニを激短でやっていいですか?」
言えるかー!
落ちるに決まってんだろ!!
次回、奇跡!家から五分で1200円。