●『バイト探しの旅5』高柳将太
そして俺はタウンワークを広げ、バイトをくまなく探す。
東京に居た頃、暇さえあればタウンワークを見るとゆう習慣があった為、
普通の人よりはいいバイトを見つけるのが早くなった。
ちなみに僕の特技は、ヤングジャンプをパラパラーっと7秒くらいで全部めくり、
めくり終わった後に本のどれくらいのページの所におっぱいが載ってたかが完璧に分かる事です。
おっぱいが載ってなかったら買いません。
そんなおっぱい星人がバイトを探してます。
ここまでいい仕事がないと、数ある自分の当初の条件を妥協していくしかないんです。
家から遠くてもいっか…
時給1000円以下でもいっか…
おっぱいが無い職場でもいっか…
仕事よりもおっぱいに夢中になってしまった俺は
集中してタウンワークを読めなくなっていたのだ。
ページをめくる動きはするが、頭に入らない。
すると、そこに目に入ってきた文字があった。
ハローランチ木村屋
時給1100円。
香南交差点。引山バスターミナルより徒歩五分。
早速電話。
そして次の日に面接が決まった。
もちろん短期とは言わなかった。激短とも言わなかった。
全ては金の為に。
しかし、
21歳でフリーターで休み無しでの希望をだせば、周りは不思議がる。
面接終了後、
早速主婦達に囲まれ、質問責めに合う。
なんでフリーターなの?
なんでそんなに働くの?
彼女はいるの?
この流れはある程度は予想はしていたが、
上手く東京に行く事を隠しながら質問に答えるのはなかなか難しかった。
俺の中でもちょっとした意地があって、
ただのフリーターと思われるのが嫌だったから
役者を目指してる事は伝えた。
当然の様に食いついてくる。
役者目指してるんなら東京でやった方がいいんじゃないのー?
え?テレビとか出たりしてるのー?
売れた時の為にサイン頂戴よー!
なかなか主婦達は嫌らしい所をついてくるのである。
その為テンポよく返せない。
でもそれでいいのだ。
ここでは静かなキャラでいかなければいけない。
何故かって?
全ては金の為に。
だがしかし、
俺の中でもちょっとした意地があって、
つまらない人間とは思われたくない。
面白い事を言いたい。
ふざけた事を言いたい。
しかし、話せば話す程、東京の話をしなければならなくなってしまう。
でも話せないから、つまらない人間になってしまう。
その時思った。
俺って初対面の人は特にだけど、
大抵自分の話をして大抵自分の現状を話して、
それで周りがありがたくも興味を持っていただいてくれて、
それで人と楽しく話せてるんだな。って。
現状の話ができない俺はこれほどまでにつまらない人間だとは思わなかった。
また1からトーク鍛えよ。
話は一時間にも及び、
まだ採用されてない状態で意外に仲良くなっていった。
つまらない俺にもかかわらず、周りのおかげで楽しく喋れたのである。
そして事件は起きた。
帰り際に主婦の一人が言った。
「将太って長瀬智也に凄い似てるよね?」
ナイスパスである。
ナイスフリである。
一時間つまらなかった俺がたまらなく悔しくて、
面白い事を言えなかった俺がたまらなく悔しかった。
輝く時は今しかない!
「おい!てめーふざけんじゃねーよバカヤロー!」
渾身の力を込めて、100%のテンションで
池袋ウエストゲートパーク時代の長瀬のモノマネをした。
「………。」
「あっすいません、長瀬のモノマネです…(^_^;)」
「………
あ?!モノマネね!似てる似てる?アハハハハ」
穴があったら入りたいってこうゆう時なのね。
むしろ穴がなくても自ら突っ込んで穴を空けたい気分だった。
そりゃ「…」ですわ!
つまらない奴がいきなりテンションMAXでモノマネする訳ですから!
キャラが浸透してからやるべきだったんです。
人見知りが無いとゆう自分の長所が初めて短所になりました。
人との距離感。大切です。
そして次の日採用の電話がかかってきた。
そして今僕は
ハローランチで働き二週間が経ちました。
仕事は大変ですが楽しいです。
ちょっとずつ東京の事を言える友達もできてきて、仕事も覚えてきて、
お金もちょっとずつではありますが溜まってきています。
文句なしです!
ただ一つだけ気になる事がある。
それは、
あれ以来、誰も僕には長瀬のフリをしてこない事。
スベるとゆうのが二週間も悪い形で響いたのは初めてです。
でも俺はこのままでいく。
全ては金の為に。
期間限定の感情なので、許してやってください。
今は稼ぎまくるしかないんです!!